──……



“理想の王子様”


由利は太一兄ちゃんのことをそう呼んだ。


太一兄ちゃんとは学校が違っていたけど、彼は3歳からのおじいちゃんの道場の門下生で、週末私が遊びに行った時に出会って以降ちょくちょく2人で遊んでいたのだ。


けど。



「太一兄ちゃんは、私の王子様にはならないよ」


「どうして? あんた昔から“太一兄ちゃん、太一兄ちゃん”言ってるから、てっきり好きなんだとばかり」


「え、うそ」


「ほんとよ」



太一兄ちゃんは──強くて、優しくて、かっこよくて。そして、私を守ってくれた……3つ歳上のヒーロー。


それは、紛れもない事実。


だけど──。