恥ずかしながら、ちゃんと男の子と付き合ったことのない私。


ましてやデートなんて経験は一切なく、太一兄ちゃん以外の男の子と2人で行く遊園地という“未知なる明日”への恐怖心は今、私の胸の中で計り知れないほど大きく膨れあがっているのだ。


自分だけでは抱えきれなくなった私は、遂にその前日の今日、由利に相談するに至ったのだった。



「どうしたらって……。別に、いつも通りでいいんじゃない? 強いて言うなら、変に意識しすぎないこと」


「はぁ……」


「相手は犀川くんでしょ? 大丈夫。あんまり気負わず、楽しんできなよ」


「う、うん……」



ポンと肩に置かれた手。


いつも通り、ね……いつも通り。


しかし私を蝕む緊張はというと、まだまだ少しも収まってはくれない。



「あ……もしかして、ついに犀川くんのこと好きになっちゃった?」


「んなっ!? 何で、わ、私は──」


「何?」



そう。私は太一兄ちゃんのことが好きだ。


でも犀川くんのこともその、気になるって言うか……。