すぐに追えない代わりに、あいつが残していったケータイの残骸に視線を落とした。

ふたつ折りのガラケー、その折り目の部分でぱっくり。
分断された、『元』ケータイ。

何とか手を伸ばして手繰り寄せたが、どこをどう弄っても、最早起動する気配はなかった。


「阿呆が」


ゆるゆるとベッドから起き出して服を着たところに、濡れた髪をタオルで押さえながら出てきた女。
無論、ちゃんと服を着ている。

「今、誰か来てたぁ?」

のん気な声。――竹内みどり。
こいつのせいか、由紀のあの剣幕は。


「由紀……彼女。殴られた」

「あら。誤解させた?」

答えるのも馬鹿らしくて、ふん、と鼻を鳴らした。