水泳のお時間

「…?」


制服に着替え、急いで更衣室を出ると


視線の先には廊下の壁に寄りかかりながら

誰かを待っている様子の瀬戸くんの姿が見えた。


ビックリして思わず荷物を落としてしまったわたしに

瀬戸くんが壁に持たれながらふいにこっちに顔を向ける。


その姿にドキンとしたのもつかの間、わたしは慌てて瀬戸くんの元へと駆け出していた。


「瀬戸くんどうして…?帰ったんじゃ…」

「待ってたんだ。桐谷を」

「え…?」


わたしを…?

思ってもいなかったその言葉に思わず胸が高鳴る。

そしてそのまま固まってしまったわたしに、瀬戸くんはフッと微笑んだ。


「外も暗いし、家まで送るよ」

「!そ、そんな…でも。わ、悪いよ…」

「気にしないで。これは俺の意思だから。今日、俺がちゃんと見ていなかったせいで桐谷を危険な目に合わせてしまったし、お詫びくらいさせて」


そう言って、瀬戸くんは器用にわたしの荷物を腕から抜いてしまったかと思うと、それを軽々と担ぎあげてしまった。


有無を言わせず手ぶらにされてしまったわたしは成す術もなく、戸惑いつつも顔をあげる。


「い、いいの…?」


小さく、そしておそるおそる尋ねたわたしの言葉に

瀬戸くんはふいに振り向いて頷いたかと思うと、優しく微笑み返してくれた。


その瞬間、わたしの胸は嬉しさでいっぱいになる。


瀬戸くん。きっともうとっくに帰ってしまったと思ったのに。

明日にならないともう会えないって、そう思っていたのに。


なのにあの瀬戸くんと一緒に帰れるなんて。

しかも瀬戸くんの方から誘ってくれるなんて…


夢を見ているみたい。

嬉しい!!