水泳のお時間

「…っ!」


外の音が一気に遮断されたかと思うと、とたんに耳元からコポコポと水の流れて動く音がして

目は瞑っていたけれど、わたしの体はたしかに今、瀬戸くんと一緒に水中を潜っているのだと自覚する。


…夢を見ているみたい。


ほ、ほんとうにわたし、プールを潜ったんだ。髪が水中でユラユラ揺れてるのが分かる。


…水の中ってどうなっているのかな。

見たい、知りたい。目を開けてみたい。

でもやっぱり怖いな…。


「…っ?」


だけど反射的に押し閉じた目は強くつぶったきり、それをこじ開ける勇気はなくて

そのまま瀬戸くんの体にしがみつくように抱きついていると

ふいにトントンと肩を叩かれた。


瀬戸くん…?どこ…?


瀬戸くんの顔がどこにあるのか分からなくて

目を押しつぶったままキョロキョロしていると、さっきよりも優しく肩を叩かれた。


“水の中は怖くないから。その目をゆっくり開けてごらん”


声は聞こえないし、瀬戸くんの姿は見えないのに

不思議とそんな風に言われているような気がして。


魔法みたいな瀬戸くんの細長い指先はわたしの不安を一瞬で取り去ってしまい

瀬戸くんの腕にしがみつきながら、わたしはおそるおそる目を開けた。