水泳のお時間

「!これ…」


握らされていた手をおそるおそる広げてみると

そこに現れたのは競泳用に使う黒いゴーグルだった。


その瞬間、思わずわたしは目の前にいる瀬戸くんを見あげる。

するとそんなわたしに、瀬戸くんは少し顔をかしげながら笑ってみせた。


「それ、俺が使ってたゴーグル。…桐谷には少し大きいかもしれないけど、ないよりはイイと思うから」

「い、いいの…?」


おそるおそる尋ねたわたしに、瀬戸くんは優しく目を細めながら頷き返してくれた。

その眼差しに、わたしの胸はドキンと高鳴る。


う、うそ…。ほんとうに?

…どうしよう。嬉しい。


だって、これは瀬戸くんが泳ぐときにいつも使っていたゴーグル。

一年生の時から、瀬戸くんがこのゴーグルを使って泳いでいた事を、わたしはちゃんと知っているから。


なのにそんな大事なものを、わたしなんかが触って…使ってしまっていいの…?