水泳のお時間

「潜れない?」

「は…はぃ」


瀬戸くんの言葉にわたしは更にうつむいてしまった。

そしてこんな自分が情けなくてしょうがなくて恥ずかしくなる。


そうだ。そうだった…。

わたし、泳ぐことに一番肝心な“潜る”という行為が出来ないんだ…。


勢いもあって、さっきまで強く意気込んでいただけに、ショックは隠せない。


すると瀬戸くんは何か考えるように腕を組みながらつぶやいた。


「潜れないか。そこまではさすがに予想してなかったな」

「!ご、ごめんなさ…」

「いや、いいよ、謝らないで。桐谷が一人で水に潜れるようにサポートしてあげるのも指導のうちだから」

「で、も…」

「ちょっと待ってて」


瀬戸くんはわたしの言葉をさえぎり、いったんプールサイドにあがったかと思うと、

ベンチの方へと走って行ってしまった。


…どうしたんだろう?

戸惑いながらも言われたとおり、大人しくそこでジッとして待つわたし。

するとすぐに瀬戸くんが何か手に持ちながら戻ってきた。


「はい」


戻ってきた瀬戸くんはプールに飛び降りたかと思うと

片手を握り締めたまま…それをわたしに差し出してきた。


とつぜんのことにそのままポカンとしていると、瀬戸くんに手をつかまれてしまい、驚いて顔をあげる。


「…?」


瀬戸くんに手を引かれ、そのまま無言で握らされたのは…どこか少し硬くてやわらかいもの。

その感触に、わたしはとっさに首をかしげる。


…な、に…?