水泳のお時間

「この腕の動きを覚えたら、今度はさっそく足を使って泳いでみようか」


瀬戸くんはそう言うとわたしの手を引き、プールのスタート地点まで誘導していった。


わたしは押し寄せる緊張から思わず体が震えてしまいながらも

決意を決めたように唇をかみしめる。


…バタ足も、腕の動きもちゃんと教えてもらった。

大丈夫。泳げる。

わたしは水面に向かって大きく息を吸った。


「!!」


だけどその瞬間、水面に顔をつける直前でわたしは止まってしまった。

そしてなぜかそれから下へ、どうしても顔を沈めることが出来なくて。

わたしはそのまま固まってしまった。


…?

…あ、あれ?…なんで?

どうして潜れないの?

…まさか。もしかして、わたし―――…。


「どうした…?」


泳ぎかけようとして、突然動きが止まってしまったわたしに、瀬戸くんが声をかけてきた。

その言葉に、わたしはおそるおそる顔をあげると

今にも消え入りそうな小さな声でこう言った。


「わたし…潜れないんです…」