水泳のお時間

「よそ見をしていたって事は、まさか指導中にも関わらず他のことを考えていたってこと?」


しばらくして瀬戸くんが口を開いた。

わたしは下を向いたまま、ゆっくりと頭を上下にコクンと動かす。


「はい」

「聞いていなかったという事は、また初めから説明してあげないといけないって事か」

「はい…」


まるで時間が途切れるようにぎこちなく頷き返しては

わたしの声はどんどん小さく頼りないものになっていく。


目の前に見える瀬戸くんは腰に手を当てたかと思うと、大きくため息をはいた。


「…昨日俺が桐谷に言った事、覚えてる?指導中はちゃんと集中するようにって、あれだけ念を押したはずだよな」


瀬戸くんの声色がさっきよりも低くなったように聞こえたのは、わたしの気のせいじゃない。

少しの沈黙のあと…わたしはおそるおそる頷き返した。