水泳のお時間

だけどこんな風に一人ドキドキしているのなんてきっと、私だけなんだろうな。


指導中にも関わらず出来心からつい

チラ…と後ろを見上げてみると瀬戸くんは伏し目がちに瞼を落としながら、やっぱり淡々としていた。


他の事考えたりしちゃだめ、集中しなきゃって。


そう思うのに、瀬戸くんが話して教えてくれるたび

その形の良い唇が動いて、わたしはつい視線を奪われてしまう。


あぁ、やっぱり。カッコいいな…


そんな事を考えていたら、伏せていた瀬戸くんの瞳がふいに上がり

目の前のわたしを映し出して顔を覗きこんできた。


「桐谷、腕の動き分かった?」

「え?あ、は、はい」

「じゃあ手を離すから、桐谷は教わった通りそのまま腕を動かしてみて」


瀬戸くんはそう言って、わたしの肩をポンポンと叩いみせたかと思うと、その手をスッと離した。


一瞬何を言われたのか分からずポカンとしたけれど、ハッとしたわたしは慌てて気を引きしめる。


そしてさっき教わった通り…いざ腕を動かそうとしたそのとき、思わず体が固まってしまった。


しまいにはそのまま動かなくなってしまい、横から瀬戸くんの声が聞こえてきた。


「桐谷?」

「……」


血の気が引くって、まさにこの瞬間だと思った。


…どうしよう。

よそ見していたせいで教わったこと、全然覚えてない…