水泳のお時間

「じゃあ今日はもういいよ。終わりにしよう」


とっさに何か言いかけようと顔をあげたそのとき

瀬戸くんがため息まじりにつぶやいた。


その言葉に、わたしはハッと後ろをふりかえる。


「今日は全然集中できてないみたいだし、もう帰っていいよ」

「!ご、ごめんなさ…ち、違うの。わたし…そういうつもりじゃ…」

「桐谷がそんな気持ちじゃいくらやったって同じ。意味ないよ」

「………」


瀬戸くんのそっけない一言に、わたしは返す言葉を失ってしまう。


しばらくそのまま何も言えずにいると

瀬戸くんは無言のままプールサイドへあがり、使ったビート板を戻しに倉庫の中へと入って行ってしまった。


ひとり学校の大きなプールに取り残されてしまったわたしは、震えあがる体を必死におさえる。


どうしよう。怒らせちゃった…。