水泳のお時間

「や、やめて!!」


その瞬間、わたしは自分でも驚くくらいの大きな悲鳴をあげたかと思うと


瀬戸くんの手から脚を必死にふりほどいて立ち上がり、逃げるようにプールの隅っこへと駆け出した。


そしてそのまま瀬戸くんに背を向け、おびえたように体を縮こませる。


「…桐谷、今年は泳げるようになりたいんだろ?そんな練習に身が入らないようじゃ、いつまで経ってもうまくならないよ」


背を向けたままひとり体を抱きしめて震えていると
後ろから瀬戸くんの声が聞こえてきた。


瀬戸くんの言葉に、わたしはギュッと目を押しつぶる。


…瀬戸くんの言うとおり、今年こそは絶対泳げるようになりたい。


泳げないことがコンプレックスの自分と早くさよならをして

そして自分に自信を持って前向きになれたわたしを、瀬戸くんに見てもらいたいって強くそう思ってる。


その気持ちは誰にも負けないくらいある。あるのに。

だけど……