水泳のお時間

「あ、あの瀬戸くん…これは…」

「本当にどうしようもないな桐谷は。平泳ぎの泳ぎ方も分からないなんて」

「?…きゃっ!?」


瀬戸くんはまるで囁くようにそう言うと

何を思ったのかいきなりわたしの両足首をつかみ、そしてそれを一気に水面近くまで持ち上げてきた。


突然足が水中に浮いて自由を奪われてしまったわたしは思わず大きな悲鳴をあげると、慌ててプールの角にしがみつく。


するとそんなわたしを見て、後ろにいた瀬戸くんが呆れたように口を開いた。


「ほら。だから言ったのに」

「っ…?瀬戸く…」

「でも大丈夫。心配しなくても、忘れんぼの桐谷にはゆっくり丁寧に教えてやるから」


静かに微笑みながら、そっと耳元に甘く囁いた瀬戸くんの言葉に、わたしの背筋がゾクッとふるえた。