水泳のお時間

「…えっと…」


しばらくのあいだ、わたしはその答えに戸惑い、困った顔をするけれど


ふいにわざとらしく目を細めてみせた瀬戸くんの、

まるで何かを企むようなそのしたたかな笑顔に、わたしの心臓がドクンと音をたてる。


「瀬…、んっ…」


その瞬間とっさに何か言いかけようとしたわたしの口をわざとふさぐように、瀬戸くんの唇がもう一度重なる。


そしてさっきしてくれたよりもずっと

もっともっと深くて…まるで今にもとろけそうなその甘い口付けに、

ようやく瀬戸くんが唇を解放してくれた時にはもう、わたしの心臓はパンク寸前。


赤面したきり、すっかり硬直してしまったわたしを楽しそうに見下ろしながら


もう一度だけ。


最後に、もう一度だけ。


瀬戸くんはわたしに、今まで見た以上に最高の……

とびっきりに甘い笑顔を向けてこう言ってくれた。




「桐谷が分からないことは全部、俺が教えてやる」




―――それは夏が始まるまでの短い時間


放課後だけに訪れる


瀬戸くんとわたしの、甘く危険な水泳指導は今日で終わりを告げる。


…でももう寂しくないよ。

悲しくなんて、ないよ。


だって……





「教えて下さい。これからもずっと……」





本当の“夏”は今、始まったばかりだから―――。