水泳のお時間

「…こ、今度はうまく出来るよう頑張ります…っ」

「や、そうじゃなくて。違うんだ。…前にも言ったけど桐谷は上手くなくていい。出来ないままでいいって事」

「…?」

「どうして俺が何度もこんな酷いことを言うのか、分かる?」


聞かされた質問の真意とは不釣り合いだと思うくらい、

瀬戸くんはとても優しく穏やかな眼差しを向けた。


そして瀬戸くんのその細く長い指先が、ゆっくりとわたしの唇をなぞってピタリと止めたとき。


…梅雨の雲で覆われていた空の隙間から、

太陽の光が差しこんで、わたしと瀬戸くんを優しく照らしだす。


プールの水面がキラキラと輝き始める。