水泳のお時間

「あの、もし…。もしも制限時間内に間に合わなかったらその時は……」

「今日は練習じゃなく本番。だからチャンスも一度きりだよ」

「……!」


じゃあ、それって…


だけど、わたしはこれ以上言葉にして聞くのが怖くて。

代わりに、イヤな冷や汗が全身を伝っていくのを感じた。


…瀬戸くんが言おうとしているのは多分、

もしわたしが最後まで立ち止まらずに泳ぎきれたとして、無事ゴールに辿りつけたとしても


肝心の制限時間までに間に合わなければ、

泳げた泳げないに関係なく失格という意味なんだと思った。


それは同時に、わたしの夢も叶えられずに終わってしまうと言うこと。


その意図がようやく呑みこめたとき、

これはわたしにとって挑戦というより、ほとんど賭けに近いと思った。



「…どうする?」


黙っているわたしに、瀬戸くんが口を開く。


わたしはしばらく悩んだあと、ようやく覚悟を決めたように胸の前に両手を近づけ、ぐっと力をこめた。


「……」


……つまり、チャンスは一度だけ。


失敗は許されない。


最後まで無事泳ぎきれる保証も、制限時間に間に合う根拠だって、ないかもしれないけど…



「…分かりました。やります」


どちらを選んでも、結局後悔するのなら。


やらないで後悔するより、やって後悔した方がずっといい。


それでもわたしは、立ち止まるわけにはいかないんだ。