昨日はあのあと、結局いつものように瀬戸くんに家まで送ってもらってしまった。


そのたびに何度も申し訳ない気持ちになるけれど、

それでも瀬戸くんといられる時間が増えたことが本当はとても嬉しくて。


なのにもっと、それ以上に長く瀬戸くんと一緒にいたい。

傍にいたいと願ってしまうのはわたしのワガママ、欲張りなんだって…分かってる。


それでもやっぱり寂しさはごまかせなくて。


せめて別れぎわ、サヨナラの代わりに勇気を出して「また明日」と…

精一杯言葉を変えて伝えてみたわたしに


こっちを振り向いた瀬戸くんは静かに目を細めたかと思うと「明日、楽しみにしてる」とそう答えてくれた。


瀬戸くんの言葉に、わたしはその夜部屋の天井を見つめながら…

黒いゴーグルを両手に抱きしめ、明日への期待と不安を胸に、目を閉じる。




――そしてとうとう迎えた水泳最後の日

わたしはプールの扉を開け、前へ踏みだした。