プールの練習を止め、制服に着替えたわたしは、

教官室に鍵を戻しに行ったものの、その後は特に予定も、行くあても見つからず、とりあえず階段をおりる。


そのまま学校を出ようとしたら、ふと奥に誰かいるのが見えて、

わたしは動かしていた足を止める。


すると部活の練習中に突然雨に降られたのか、

ジャージ姿のまま学校の玄関で、ひとり雨宿りをしている女の子がいるのに気がついて。


一瞬、知らない人かと思ったけれど……でも確かに見覚えのあるその後ろ姿に、

わたしはとっさに思い出してしまう。


――自分は泳げませんとかウソまでついて、瀬戸くんに近づこうとするなんて最低。


足を止めたきり、しばらくそこから動けずにいたら、


わたしの視線に気が付いたのか、
背を向けていたはずの女の子が突然タオルで髪を拭く手を止めたかと思うと、こっちを振りむいた。


そしてそのまま大きく見開かれた瞳に、思わずわたしの心臓がドキッとする。


「……誰?」

「あ……」


やっぱり。あの時の……


振り向いたその顔を見たとき、やっぱりあの女の子だと思った。


でも何て声をかければいいのか分からなくて、戸惑っていると


女の子はわたしが抱えていた、水泳用具が入ったバッグを見るなり、露骨に顔をしかめた。