水泳のお時間

「…ッツ…!」


そう思いかけたその時、とつぜん息が苦しくなった。


それでもわたしの両足首は、今もまだ後ろにいる瀬戸くんによって押さえられたまま、

水中から出られないわたしは首筋を両手で掴んで必死にこらえる。


“知鶴が昔から水泳苦手だったのは知ってたけど……。もしかして中学のとき水泳の授業で溺れたこと…ほんとはずっと、引きずってた?”


ひたすらギュッと目を押しつぶり、溺れるかもしれないという恐怖に耐えながら


まるでノドの奥をしめつけてくるようなその息苦しさに


今日のお昼休みマキちゃんから言われた言葉がふと頭をよぎったと同時に…、

やっと乗り越えられたと思ったはずの、過去に溺れかけた日の出来事を思いだしてしまった。


…泳げなくて、もがいてももがいても水中から上がることが出来なかったあの日の自分。


苦しくて、息が出来なくて、もしかしてこのまま自分は誰にも気づかれないまま、

ここから出られずに死んでしまうんじゃないかって、そんな風にも思った、あの時の自分を。


「…っ!!」


その瞬間、わたしはとっさに自分の頭を抱えると首を大きく横にふった。


イヤッ!お願い、もうやめて!

溺れた時のことはもう、忘れたい。思い出したくなんてないのに…!

なのに瀬戸くんはどうしていきなりわたしにこんな事をするの?


泳ぐことは怖くない。


本当は嬉しくて、そしてすごく楽しい事なんだって、

初めてわたしにそう教えてくれたのは他の誰でもない、瀬戸くんだけなのに…。


それなのに、どうしてわざとわたしを溺れさせようとするの…?

…わたし、こんな思いするなら、これからもずっと泳げないままでいい。

もう一生、泳げないままでいいから……!!


だから、助けて!


助けて瀬戸くん…!!