水泳のお時間

何も言えない、言うことが出来ないわたしに、

目の前に立っている瀬戸くんが静かに口を開く。


「俺がいいと言うまで桐谷は泳いでいるよう最初に説明したはず。泳ぐのを止めていいとはまだ言ってないよ」

「……で、でも…」

「二度は言わない。続けて」


有無も言わせないその言葉に、わたしの肩がビクッと震えあがる。


それでもやっぱりまだ躊躇して、泳ぐのをいつまでもためらっていると、

今度は瀬戸くんがこっちに歩み寄ってきて…


驚いたわたしは慌ててプールに飛び込むと、再び水の中を潜って泳ぎだした。


「……っ!」


けれどすぐにまた後ろから瀬戸くんに足首を掴まれ、泳ぐのを阻まれてしまう。


そのままわたしの体を故意的にプールの下へと仕向けようとするその力に、

わたしが感じていた違和感は予感から、とうとう確信へと変わっていって。

わたしはギュッと目を押しつぶった。


やっぱり…

これはわたしの思い過ごしじゃない…。


理由は分からないけれど…でも、それでも確かに瀬戸くんはわたしを、

わざと溺れさせようとしている。


そう確信した瞬間、わたしは今にも胸が押し潰されそうになり、

後ろにいる瀬戸くんを見つめ、目で必死に訴えかけた。


…瀬戸くん、どうして?

どうしていきなりこんな事するの……?


今まで溺れてばかりだったわたしのことを助けてくれて、いつも励ましてくれていたはずの瀬戸くんが、どうして…?!