水泳のお時間

「…?!」


!瀬戸くん…!


誰かに腕をつかまれた気がして、とっさに目を開けると、

そこにいたのは瀬戸くんだった。


それを見てわたしが何か感じる、そんな時間さえなかったと思うくらい


瀬戸くんはわたしの腰を掴んで持ちあげたかと思うと、

あっという間にわたしを水面上へと引き上げてくれた。


そのとき、空中をキラキラと舞う白い水の粒たちに紛れて


まるでスローモーションのように流れて見えた、

わたしを遠く下から見上げる瀬戸くんの顔や表情に、わたしはこの目を見張らずには居られなくて。


目は開いて止まったまま…ゆっくりとプールの地面へと下ろされた足に、わたしはようやく気が付いてハッとする。


「ご、ごめんなさい…!わたしが勝手に泳いだりしたから…」


また水に溺れ、瀬戸くんに助けられてしまった…。


もう二度と瀬戸くんの足手まといになるようなことはしたくなかったし、見せたくなかったのに…どうして…?


自分の行動を悔やみ、下げた頭を上げられずにいたら、ふと瀬戸くんの指先がわたしの頬に触れた気がして。


そのまま上へとあげられた視線に、ビックリしたわたしは目を丸くして真上の瀬戸くんを見つめる。


するとそのとき見た瀬戸くんの顔は、気のせいかな。


いつもと違って少し、ほんの少しだけだけど…

一瞬だけ寂しそうな目をしているように見えた。


「せ、瀬戸くん…?」

「知ってるよ。初めから全部。本当はもう少し前からここに来て、遠くから桐谷の様子をずっとこの目で見ていたから」

「えっ」

「だからそこで桐谷が一人で泳ごうとしているのももちろん気づいてた。なのに俺はそこから動こうとしなかった…というより、そうしたくなかったと言う方が正しいのかな」


瀬戸くんの言葉に、わたしは首をかしげる。


同時に、さっきわたしが感じたはずの違和感は、いつの間にか足跡を消し、いなくなっていて。


そのまま固まって動かなくなってしまったわたしを前に、

瀬戸くんは少し困った顔で笑った。