その為にはわたしも、いつまでももう弱音ばかり吐いていないで、頑張ろう。


頑張って頑張って、少しでも追いついて。

そしたら、わたし……


「でも俺は桐谷が水泳向いてないなんて、一度も思った事はないけどね」

「…!」


しばらくそんな事を考えて歩いていると、瀬戸くんがぽつりと呟いた。

その言葉に、わたしは思わず歩いていた足を止めて、瀬戸くんを見上げる。


「桐谷はまだ気づいてないみたいだけど、桐谷は確実に成長してる。昨日よりずっと…しかも俺が想像していたよりも遥かに早いスピードで」

「!わ、わたしが…?」

「そう。このまま行けば俺さえもあっという間に追い越すよ」

「えっ…!」


瀬戸くんを追い越す?わ、わたしが…?!


思ってもみなかった瀬戸くんの言葉に、わたしの瞳が一瞬で色めき立つ。


それでもやっぱりまだ信じられなくて…

大きく目を見開いたまま首を大きく横にふって否定するわたしに、瀬戸くんはこう言った。


「それでももう諦めたくないんだろ?桐谷は」

「!」


…なんだろう?この気持ち。

言葉ではうまく表すことの出来ない、

まるで心の奥底からじわじわと湧き上がってくるような、居ても立ってもいられないような…

どこかはがゆい気持ちに、フルフルと体中が打ち震えてくる。


「せ、瀬戸くん!」


気が付くと、わたしは叫んでいた。

わたしの声に、目の前の瀬戸くんが振り向く。


すると何もしていないのにだんだん息があがってきて、まるで泳いでいる時みたいに体中が熱くなって……


頭の片隅で、もう一人の自分が見えた気がした。