水泳のお時間

「それに、ウソを言ったつもりはないよ」

「えっ?」

「ココじゃ言えないようなことだって、実際してるし」


瀬戸くんはサラッと、まるでどうって事のないようにそう言って、いつものように微笑んだ。


その言葉の意味をすぐに理解できなかったわたしは、

自分の中にある精一杯の知識を必死に巡らせながら…


気がつくと、さっきまでわたしと同じ位置にあった、瀬戸くんの目線はいつの間にかわたしの首の、もう少し下の方に向けられていて…


「~~~!!」


その瞬間、わたしは慌てて瀬戸くんから背を向けると、

急いでブラウスのボタンをかき集めて止めた。


でもそれきり振り返れなくて耳まで真っ赤になりながら、

その場で固まるわたしに、後ろで瀬戸くんが笑ってる。


それが分かると、ますます自分の顔がカァーッと熱くなった。


や、やだ…。わたしあれからずっと全開だったんだ…

は、恥ずかしい…!!


「ね。俺の言ったこと、ウソじゃなかったでしょ?」


わたしの肩に触れながら、耳元でそっと囁かれたかと思うと、

しだいに瀬戸くんの足音が遠のいていく気がして。


わたしはあわてて後ろを振り返る。


「あ…瀬戸くん、ま、待って…」

「ん?」

「助けてくれて、あ、ありがとう…」


やっとの思いで、この気持ちを精一杯言葉にして伝えたわたしに、

瀬戸くんは目を細めながら…「また後で」と笑った。


その言葉の本当の意味を知りつつも……わたしはいつまでもこの手を小さく振りつづける。


そしてとうとう瀬戸くんの姿が見えなくなると、

わたしは思わずギュッと胸に当てた手を握り返しながら、足元に落ちていた木の棒を複雑な気持ちで見つめていた。


「…っ…」


さっきは本当に怖かったけれど

でも、わたしもみんなと同じで瀬戸くんが好きだから、その気持ちが痛いほど分かる。

だからどうしても考えてしまう。


…あの女の子たちは今ごろ、どこかで泣いているのかなって……