水泳のお時間

女の子たちが居なくなると、瀬戸くんと二人きりになった。


でも何て声をかければいいのか分からなくて一人オロオロしていたら、

ふと瀬戸くんが後ろを振りかえり、こっちに駆け寄ってきた。


「桐谷」

「は、はいっ!」

「大丈夫?ケガしてない?」


そう言って、わたしの顔を心配そうに見おろす瀬戸くん。


その眼差しに心臓がドキマギしながらも、わたしは精一杯コクンとうなずき返すと、

ギュッと自分の制服のスカートをにぎった。


「瀬戸くん…す、すみませんでした…。みんなの前であんなウソ、言わせちゃって…」


わたしを助けるために、さっき瀬戸くんがわざとみんなの前でウソを付いてくれた事は、途中から気づいてた。


それでも、わたしは嬉しかった。

助けに来てくれたことだけで、本当に十分だと思ったから…。


だけど、瀬戸くんは…?


誤解されるようなこと…、わざとみんなの前で言ってしまって本当によかった?

あの人たちがわたしを呼び出したのだってきっと、瀬戸くんを好きだったから……


「何で?桐谷は言ってほしくなかった?」

「えっ?」

「それとも言わない方がよかった?」


瀬戸くんの言葉に、わたしはあわてて首を横にふる。

すると瀬戸くんはとたんに表情を崩して、やわらかく微笑んだ。


「なら、いいじゃん」

「あ…」

「俺たちがそういう関係だって思わせておいた方がつじつまが合うし、その方がお互いにとっても都合がイイだろ?」


ね?


まるでそう言い聞かすように、わたしに目線を合わせて屈みながら…

わざと子供っぽく顔をかたむけてみせた瀬戸くんに、胸がまた熱くなる。


とうとう何も言えなくなってしまい、

わたしがやっとの思いでコクッ…とうなずき返すと、瀬戸くんがフッと微笑んだ気がした。