水泳のお時間

「…何してんの」


殴られる…!


直感的にそう思い、とっさに頭を庇いながらその場にしゃがみ込んだものの…


こちらに向かって勢いよく振り下ろされた木の棒は、

いつまで経ってもわたしに当たってこなくて…


しばらくして突然上から聞こえてきたその声に、

わたしは押し瞑っていた目を開き、おそるおそる顔をあげてみる。


するとそこにはなんと、女の子の腕を掴んで立っている瀬戸くんがいた。


「せ、瀬戸くん…?!」

「うそ…?!なんで…?!」


突然現れた瀬戸くんに、今までわたしを取り囲んでいた女の子たちが一斉に動揺した声をあげ、

まるでわたしから離れるように途端に小さく散らばる。


その騒ぎから少し遅れて、わたしもその場からよろよろと立ち上がると、瀬戸くんを見つめた。


せ、瀬戸くん…どうして?


…助けに来てくれたの…?


「こんなの人に向かって投げたりしたら、危ないよ」


そんなわたしの思いを知ってか知らずか

まるで強弱のない声で呟いた瀬戸くんは、

女の子が握っていた物を難なく抜き取ってしまったかと思うと、足元にそっと手放した。


その瞬間、カラン!と言う大きな音がして、

ゴロゴロとまるで地響きのような鈍い音を立てながら地面に落ちて倒れた木の棒。


幸い、瀬戸くんが間一髪のところを止めてくれたから良かったものの、

もしあのまま本当に、これがわたしの体を直撃していたらと思うと……ゾッとした。


その光景にすっかり絶句してしまっている女の子たちを前に、

瀬戸くんがいつものように目を細めて微笑みかけながら……もう一度問いかける


「…ねぇ、何してたの?」


その瞬間、わたしの背筋がゾクッと凍りついた気がした。