水泳のお時間

「こら。ビート板は放しちゃだめだろ?ちゃんと掴んでなきゃ。でないと溺れちゃうよ」

「ご、ごめんなさ…っ」


瀬戸くんに言われるまま

わたしは慌てて水面に浮いたビート板をもう一度つかむ。


腰は今も瀬戸くんによって持ち上げれられたまま、戸惑いつつもバシャバシャと必死にバタ足を続けた。


「そうそう。その感じ。少し良くなってきた」

「瀬戸くん…っ」

「これなら俺が手を離しても平気かな?ためしに離すよ」

「えっ、待っ…」


ほめられたことが嬉しくて思わず喜んでしまいそうになると

瀬戸くんは突然わたしの腰から手を放してしまった。


その瞬間、わたしはとっさに足裏を地面に滑らせ、溺れそうになる。


「やっ、瀬戸くっ…おねが…泳げなっ…」

「しょうがないな、桐谷は。今度は浮き輪も持ってきてやらないとだめか」

「……」


必死に助けを求めるわたしを容易く抱き上げて、瀬戸くんがふいにため息をはいた。

それを見てわたしはショックを受けてしまう。


どうしよう…。

わたしがいつまでも泳げないから、呆れちゃったの…?