水泳のお時間

「あ、ありがとうございました…っ!その…じ、人工呼吸…」


あらためて言葉にして言おうとすると、瀬戸くんに人工呼吸してもらった時の感触を鮮明に思い出してしまい、

わたしの顔はまるで火が出そうなくらい真っ赤になった。


そして最後までこの気持ちを伝えることが出来ないまま、わたしは言葉につまる。


それがたとえ、止むを得ない判断で、

瀬戸くんにとってそこに特別な感情は無かったとしても


それでもわたしの胸はドキドキと苦しくて、今にも体が熱で溶かされてしまいそうで。


たえられず、とっさに下を向いたわたしに、瀬戸くんは苦笑いした。


「人工呼吸なんて実際やった事なかったし、見よう見まねでやったから、あのやり方で合ってたのかは正直、何とも言えないけど」

「やったこと無いのに、出来たんですか…?」

「一応ね、勉強してるから」


そう言って、瀬戸くんは微笑んだ。


その言葉に、わたしはただただビックリしてしまって、ポカンと目を見ひらく。


…そ、そうだったんだ。初めてやったようには思えないくらい、慣れた手つきだったのに…。


まさか瀬戸くんも初めてだったなんて。


見よう見まねだとしても、あんなに簡単に、しかも本当にその通りにやってのけてしまうなんて

瀬戸くんて、やっぱりすごい。ほんとうに何でも出来るんだ…。


そんな瀬戸くんを、わたしはますます好きになった気がして


またドキドキしてしまっていると、今度はわたしが瀬戸くんに聞かれる番だった。


「それより、何で黙ってたの?」

「え?」

「水着のこと」


突然、何の前触れもなく唐突に聞かれて。

さっきまでの穏やかな瞳がまるで嘘のように、ジッと責めるように見つめられて。


わたしの心臓がドクンって音をたてた。