水泳のお時間

「は?水着?」

「昨日ね。桐谷の水着が誰かにいたずらされていたみたいなんだけど、知らない?」


怖いくらい淡々とした口調でそう話す瀬戸くんに、

小野くんの表情はますます険しくなっていった。


その横でわたしの顔は一気にサーッと蒼ざめていく。


う、うそ…

瀬戸くん、気づいてたの?


心配かけたくなくて、誰かに嫌がらせされたこと黙っていたのに、どうしよう…


「何が言いたいんだよ。つか、ちげーし。確かにゴーグルを取ったのは俺だけど、水着の事までは知らないし、やってない」

「ふーん。そう」

「女の水着切り裂くほど、俺だって陰湿じゃねーから」

「そう?人のゴーグル勝手に盗んで、それを利用して脅迫する事自体、充分陰湿で子供じみた行動だと思うけど」

「なっ…?!」


瀬戸くんの口から出たとは思えないような、明らかに相手を挑発するような言葉に、

小野くんが顔を真っ赤にさせて口を開ける。


その間に挟まれながら、わたしもビックリして、目を丸くする。


あ、あれ?な、なんか

やっぱり瀬戸くんいつもと違って言葉にトゲがあるような気がする…


顔はいつもみたいにニコニコしてるのに、その笑顔が逆に怖い…。


「まじで俺じゃないから。正直あんな事あって、もうコリゴリだよ」

「……」

「ほんとに反省してるから、勘弁してくれ」


すっかり困りきったように言う小野くんに、瀬戸くんもそれ以上追求するのを止めたみたいだった。


わたしも小野くんがウソをついているとは思えなかった。


それに小野くんが全部悪いわけじゃない。

ちゃんと気をつけていなかったわたしにも、責任はあると思うから…


「うん。もう大丈夫だから…気にしないで」


わたしの言葉に、小野くんはちょっと後味の悪そうな顔をしながらも、

そそくさと保健室を出ていった。