水泳のお時間

“今まで水泳やってきた経験から言わせてもらうけど、ぶっちゃけ桐谷さん、ムリだよ。水泳向いてない”


小野くんに言われた言葉が、ズキズキと痛い。

それはまるで胸に張り付いた赤い痕みたいに、キリキリと痛くて。


…ショックだった。

自分の実力をあらためて思い知り、絶望感でいっぱいになった。


“たった数日で俺らみたいに泳げるようになろうなんて考え、はっきり言って甘いよ。水泳舐めすぎ”


小野くんの言っていた事は、最もだと思った。

小野くんも小野くんなりに、大会への優勝目指して今までずっと辛い練習をこなしてきたからこそ、

はっきりと言える言葉であって、積み上げてきた経歴があるからこそ説得力がある。


だけどわたしには何もない。


泳げない自分が恥ずかしい。どうせ自分は一生泳げない。

そう思う気持ちから、今までわざと水泳というものから逃げて、避けてきた。


今まで自分に自信が持てなくて…胸を張れるものも何ひとつ無かった、

そんなわたしが、今になって泳げるようになりたいなんて


小野くんみたいにずっと前から真剣に頑張っている人たちから見れば、

それを良く思わないのは当たり前の事だと思う。


瀬戸くん。わたし…やっぱりムリなのかな。


水泳、向いてないのかな…。


それでも本当はまだ、諦めたくないよ……。