水泳のお時間

「桐谷!」


そのとき、後ろからわたしを呼ぶ声が聞こえたかと思うと、

バシャバシャと水をかきわけながらこっちに走ってくるような音がして、突然誰かにグイと体を抱き上げられた。


そのまま目を覚まさせるように何度も頬を叩かれてしまい、

ぼんやりする意識の中、わたしは精一杯の力を出して重たくなった瞼を開けてみる。


するとそこには、大きく息を切らしながら、

ジャージ姿のままびしょ濡れになっている瀬戸くんがいた。


「っ…げほっ……せ、瀬戸く…?」


その瞬間、とっさにその腕にしがみついて、思わず名前を口にしたわたしに、

瀬戸くんはわたしを急いでプールから引きあげる。


そしてすぐに、わたしの体をプールサイドの地面に抱きおろしたかと思うと、

仰向けに倒して寝かせた。


「お、おい瀬戸。何して…」


後ろにいる小野くんの声も無視して、瀬戸くんはわたしの額に手を当て、

顎を引いたかと思うと、もう片方の手で鼻をつまんだ。


そして大きく息を吸い込みながら…瀬戸くんがこっちに顔を近づけてくる。


そう思った時にはもう、わたしの口は瀬戸くんの唇にふさがれていた。



「!っ……」


驚くわたしの口を覆って、瀬戸くんの息が静かに吹き込まれる。

数秒の間、唇をふさがれたまま…瀬戸くんがわたしから口を離す。


そして再びわたしの中に瀬戸くんの息が入ったかと思うと、

少しのあいだ瀬戸くんの唇が離れて、また同じように息を吹きこまれる。


それを何度か繰り返していくうちに、ノドの奥からしだいに何かがこみ上げてきて…



「っ…!!げほっ…げほっ…」


その瞬間、わたしは口からプールの水をはき出した。