水泳のお時間

「あはは、桐谷さんがんばるねー。でも肝心のスピードは全然進んでないみたいだよー?」


小野くんが言うとおり、

わたしの泳ぎは泳いでいると呼ぶにはあまりに不十分で、相変わらず前に進まない。


不恰好なわたしの泳ぎを見て笑いながら、

後ろを歩いてくる小野くんの足にさえ、簡単に追いつかれてしまう。


それでも、わたしは泳ぐのを止めなかった。


「ねぇ、何でそんな泳げるようになりたいの?つーか、そもそも桐谷さんが泳げるように手助けするとか、実際そんなん俺にはどうだって良いんだよ」

「…っ」

「今まで水泳やってきた経験から言わせてもらうけど、ぶっちゃけ桐谷さん、ムリだよ。水泳向いてない。ただでさえ相当なカナヅチなのに、たった数日で俺らみたいに泳げるようになろうなんて考え、はっきり言って甘いよ。水泳舐めすぎ」

「!!」

「一生泳げなくたって、別にいーじゃん。そんな事よりさ、俺ともっと楽しいことしない?ぜってーそっちのが楽しくて、気持ちーから」


小野くんの言葉に、わたしはショックを受けてしまい、思わず泳ぐのをやめて立ち止まってしまった。


そのまま言葉を無くして絶句するわたしを見て、

小野くんがニヤニヤ笑いながら近づいてくる。


「プールに二人きりって、すげーコーフンするね。瀬戸も相変わらず向こうで黙って観てるだけだし…少しくらいイタズラしたって、バレねーよな」

「?!」


そう囁いたかと思うと、小野くんはいきなり水中を指でかきわけて、

わたしに手を伸ばしてきた。


その瞬間、わたしはとっさに目を押しつぶって首を横にふりあげる。


「いやっ、やめて…!」

「大丈夫だって。プールの中だし、瀬戸からは見えねーよ」


小野くんが水の中で、無理やりわたしに触れようとしてくる。

わたしはジタバタと水しぶきをあげて、必死に抵抗した。


いや!やめて!


わたしに触らないで!!