小野くんに連れられ、立たされた場所は…プールのふち。


そこから恐る恐る顔を見下ろすと、

真下ではプールの水が強い風に押しあげられて、大きく波打っている。


なんだか怖い……。


っ、瀬戸くん…!


「…!」

「だーかーら、よそ見すんなって。何回言わせんの?」


その光景に何だか恐怖を感じて、思わず瀬戸くんがいる方を見ようとしたら、

後ろにいた小野くんに肩をつかまれ、止められてしまった。


小野くんに促されて、わたしは仕方なく視線をプールに戻すと、その場に足をかがめ、目の前の水面におそるおそる腰を下ろしていく。


「…っ」


意を決し、そのまま体ごとプールに浸かる。


だけど準備運動もしないまま、シャワーさえ浴びずに突然入ったプールの水は、やけに冷たい。


あまりの冷たさに思わず両腕を抱きしめて身震いしていると、

まだプールサイドに立っていた小野くんがヒョイと身を乗り出して、こっちを覗きこむように言った。


「桐谷さんも見かけによらず、すごい女だよね」

「っ?」

「見えてるよー。キスマーク」


そう言って、小野くんが目を細めながら指を差し向けた先は…わたしの胸元。


促されるまま視線をそこに向けると、昨日小野くんに付けられた赤い痕が、

まだくっきりと浮かび上がっている。


その瞬間、急いで胸元を手で覆って隠したわたしに、小野くんはニッと笑った。


「やーらし」


その言葉にわたしの顔が一気にカァッ!と熱くなったかと思うと、

小野くんがプールに足から勢いよく飛び込んだ。