水泳のお時間

「取り引き……?」

「そう」


考えもしなかった小野くんの言葉に、ギュッと両手を握りしめたまま困惑するわたし。


すると小野くんは片手でゴーグルを弄びながら階段をあがり、わたしのすぐ目の前へ立った。


「瀬戸が桐谷さんに教えてる水泳指導ってのをさ、俺にもやらせてよ」

「えっ?」


小野くんの口から出た言葉に、わたしは思わず目を丸くする。


…えっ?お、小野くんが?わたしに?

それってつまり、小野くんがわたしに水泳を教えるってこと?


ど、どうして……?!


「瀬戸が桐谷さんに水泳を教えてるのを見て、単純に俺もやってみたくなったんだよ」

「あ、で、でも……」

「もし桐谷さんがいいって言うなら、このゴーグルは返す。断るのなら返さない」

「!」


本気なのか、小野くんの目はもう笑っていなかった。

そのままジリジリと詰め寄られて、わたしは逃げ場を失ってしまう。


そんな……どうしよう。

瀬戸くんからもらったゴーグルは確かに返してほしい。


今すぐ返してもらわなくちゃ困るくらい、本当に大切な物だけど

でも……

その代わりに小野くんから水泳を教わるなんて……