水泳のお時間

「その証拠に、あそこ見てみ」


すると瀬戸くんはそう言って、わたしにある場所を指し示してみせた。

その方向に、わたしはおそるおそる目を向ける。


するとそこで見たのは

わたしがさっきまで居たはずの……スタート地点。


「あそこからここまで、桐谷は泳いで来たんだ。自分の力で」


思わず言葉を忘れて茫然とするわたしに、瀬戸くんが耳元に顔を近づけて教えてくれる。


その言葉に、一気に視界がウルウル滲んでくるのが分かった。


うそ…

うそぉ…。

ほんとに?

本当にわたし、25メートル泳いだの?


「やっと実感した?」


しばらくの間信じられなくて、何も考えられずにいたけれど、あとからジワジワと実感がこみ上げてきて。


首が痛くなるくらい、何度も何度もうなずき返した。


目の前に映る…近く、遠かった25メートル。ずっとずっと、夢だった。


本当にわたし、泳げたんだ。泳いだんだよね?

自分の力でここまで泳げるようになること。

叶わないと諦めていても、本当はどんなに夢みていただろう。


うれしい!!