水泳のお時間

「やっ…こわい…!せとく…っ、瀬戸くん…っ」

「大丈夫。俺がついてるから。そのまま続けて」


進行方向が見えなくて思わずパニックになるわたしに、

すぐ傍にいた瀬戸くんがすかさず声をかけてくれる。


それでも、瀬戸くんはただ淡々とこっちを見下ろしたまま、冷静に指示を出すだけで。


…こんなとき、いつもならすぐ差し出してくれる瀬戸くんの手も、今はプールの水に沈められたままで…


どうして?

そんな気持ちが、思わずわたしの頭を駆けめぐった。


「…っ…」


それでも、なんとか手足を動かそうと勇気をふりしぼる。


…だけど、進む先が見えない。


それだけで、すぐ真後ろに障害物があるような気がして、今にも何かにぶつかりそうな気がして

わたしはとうとうプールの床に足をついてしまった。


「せっかく泳げていたのに、何で止めたの?」

「ご、ごめんなさい…」

「もう一度スタート地点からやり直そう。来て」

「は、はい」


落ちこんでいる間もなく、瀬戸くんに言われるまま、わたしはあわててスタート地点へと引きかえす。


それでもさっきの動揺が消えなくて、一瞬泳ぐのをためらってしまったけれど、後ろにいる瀬戸くんの視線に押され

戸惑いながらも、わたしはもう一度プールのふちを握りしめた。



「…っ…」


そしてそのままさっきと同じように泳ごうとするけれど、思うように体が動かない。

どうすればいいのか分からずに…でももう立ち止まることは出来なくて。

思わず涙が出そうになったそのとき、視界にふと瀬戸くんの姿が映った。