水泳のお時間

瀬戸くんの手が離れたのが分かると、

わたしはキュッと唇に力をいれ、足は今も上下に動かしたまま、腕をゆっくりまわしてみた。


「…っ」


聞こえてくる、パシャパシャと水の弾ける音といっしょに、

少しずつ移動していく真上の景色。


瀬戸くんの手を借りずに、自分自身の力だけで泳いでみることは

思った以上にむずかしく、とても勇気のいることだったけれど


それでも精一杯、瀬戸くんに教わったことを何度も意識しながら手足を懸命に動かした。


その甲斐もあって、わたしの体は下に沈むことなく、背中は今も水面を仰向けに泳いで…。


思わずホッとしたのもつかの間、

何とか今よりももっと進めるよう全身に力をこめた瞬間、ふ…とわたしの体がこわばる。


「…?」


?あ、れ…?


わたしは今、いったいどこを泳いでるんだろう…?

進行方向が分からない。

後ろが、見えない。

怖い…!