「今日もすごい荷物だね。それ、放課後のために毎日持ち帰って洗ってんの?」

「…小野くん…」


やっぱり、小野くんだった。


小野くんを見た瞬間、とっさに昨日の出来事が頭をよぎって

わたしはとっさに顔を背けてしまう。


そんなわたしを見て、小野くんが鼻先で笑った。


「すごい警戒用だな。俺、何か悪いことしたっけ?」

「……」

「ま、いーや。せいぜい放課後の練習がんばって」


そう言って、小野くんは何も言えないわたしの肩に、わざとらしく手を置いたかと思うと、そのまま教室の中へと消えていった。


そんな小野くんの後ろ姿を複雑な気持ちで見つめながら

途中でとっさにその視線を逸らす。


「へ?何?練習って?何のこと?ってか、知鶴ってばあの小野くんと仲良かったの?!」


そのまま顔を俯かせて黙っていたら

今までの会話をポカンとした様子で聞いていたマキちゃんが、興奮した様子で騒ぎ出す。


だけどわたしは、何て言えばいいのか分からなくて…。


とっさに、ギュッと両手を握りしめて言った。


「何でもない。小野くんとは、何でもないよ…」


……それからその日は一日中、小野くんはわたしに何も言ってこなくて。


わたしと目を合わすこと無く、普段通り振る舞っていたから、もしかしたら昨日の事はもう忘れてくれたんだと思った。


…そう思いたかった。