「桐谷さんてさ、ビキニもけっこー似合うじゃん」

「え…?」

「なんかスゲーやらしかったし、見ててやばいくらいコーフンしたもん」


教室が明るくなったと同時に、小野くんがわたしの方へ近づいてくる。


でもこの時、どうしてかわたしは体が動かせなくて…

まるで足が床に張り付いたように凍り付いて


気がつくと、わたしのすぐ真後ろに小野くんが立っていた。


「実はさ俺、桐谷さんのこと…前から気になってたんだよね。桐谷さん見てるとほっとけないって言うか…守ってあげたくなるっていうの?」

「!や、やめ…っ」

「なぁ桐谷さんて、泳げなくて困ってんだろ?なんなら俺が教えてやろうか?これでも元水泳部だし、瀬戸よりもうまく教えられる自信あるよ。な?」


そう言って、ふいに小野くんの手がわたしの肩に触れた。


そのままグッときつく掴んできた指に、わたしはギュッ!と目を押しつぶる。


「んな怖がんなよ。…どうせもう瀬戸と、ヤッてんだろ?」

「!!」


さりげなく耳たぶに唇を近づけながら、わざと小さい声で囁いた小野くんの言葉に、思わず顔がカァッ!と熱くなった。


そのまま何も言えずにいたら、ふと後ろから聞こえた小野くんの含み笑いに

わたしはすぐさま顔を背けると、力いっぱい首を横にふる。


「へぇー。してないんだ。なら俺が水泳以外の事も教えてやるよ」

「っ…」

「桐谷さん」

「やだぁっ、やめて!」


その瞬間、小野くんの手がわたしの制服の中に入ってこようとして


わたしはとっさに力いっぱい小野くんの体を押すと、そのまま急いで教室を飛び出した。