水泳のお時間

「じゃあ今度はゆっくり動かしてみるから、桐谷はこの足の動きを覚えて」

「は、はい…っ」


すると瀬戸くんは、こんなわたしでも覚えられるよう

さっきよりもゆっくり…丁寧に足を動かす速度を緩めてくれた。


でもそうされてしまうと、よけいに恥ずかしくって。

さっきよりも、スカートの中がよく見えてしまうような気がしてしまって。


でもいつまでもそんな事、言っていられないんだ。

だって一日でも多く、瀬戸くんに褒められたい。

一秒でも早く泳げるようになって、

そうしていつか、瀬戸くんにわたしのこと、認めてもらいたい…。


「……」


その瞬間、わたしは決意を決めたようにギュッと手の力を強める。

そして全神経を集中させるように、静かに目を閉じた。


大丈夫。できる。

恥ずかしくなんか、ない。