水泳のお時間

「それじゃあ、ここに掴まって」


そう言って、瀬戸くんに手を引かれながら連れて行かれた場所は……プールのふち。


わたしは言われた通り、プールのふちへと近づいて、それを掴む。


「そのまま、足だけで泳いで」

「は、はい…っ」


瀬戸くんの言葉に、わたしは地面に付けていた足を離すと、恐る恐る水に浮かす。

そして周りの水をかくように、ゆっくり…ゆっくり足を広げて動かした。


「…ッ…」


聞こえるのは…わたしの途切れる息と、動くたびに弾いて揺れる水の音。


何度も必死に自分の足を動かし続けながら、やっぱり気にしてしまうのは…

そんなわたしを後ろから黙って視ている瀬戸くんの感想で…


わたしは必死に足を動かしながら、思い切って口を開ける。


「…瀬戸く…ど、どうですか…っ?」

「うん。だめだね。ただ足を開いて動かそうとしているだけで、そこに何の意味も果たしていない。これじゃ進むどころか、戻るよ」

「そ、そんな…」

「こんな事だろうと想定はしていたけど、まさかここまでとはな。…忘れんぼうの桐谷には、やっぱり最初からきちんと教えてやらないとダメみたいだ」


そう言って、瀬戸くんはわたしの足裏をつかんで揃えたかと思うと、それをお尻の上に乗せるように折り曲げる。


そのまま少し強引に広げられた両脚に、わたしの体が熱くなった。