水泳のお時間

「…なんだこれ?」


そのままボンヤリしていたら、ふいに小野くんの驚いたような声が聞こえた。


その声に反応して顔をあげてみると、目の前の小野くんがポカンとした顔で手にしていたのは…わたしの、ビキニ。


「ビキニ…?」

「あっ…!だ、だめっ」


その瞬間、わたしはとっさに声をあげると

小野くんの手から慌ててその水着を取りあげ、急いでカバンの中へしまいこんだ。


そのまま顔を赤らめて俯いてしまったわたしに

小野くんは一瞬驚いた表情をしたかと思うと、しばらくして何か思いついたように目を細めた。


「へぇーえ。桐谷さんて、ビキニとか着んだ。すげー意外なんだけど」

「……」

「学校終わったあと、どっかのプールにでも泳ぎに行ってんの?けど時期的にちょっと早くね?まだ六月じゃん」


小野くんの、冷やかしにも聞こえる質問に、わたしは何も答えられなかった。

水着を押し込んだカバンを抱きしめてジッとしたまま、ギュッと目を押し閉じる。


…お願い。それ以上聞かないで。


お願いだから、そっとしておいて…。