「あ、ああの…ち、違うんですっ、これは…!」


何言ってるのわたし!


思わず顔がカァッと熱くなって、恥ずかしくてとっさに顔を手で隠そうとしたら

突然その手をつかまれてしまって。


まるで上から包み込むように優しく両手を握ってきた瀬戸くんに

わたしは戸惑いながらも顔をあげる。


「!瀬戸く…」

「俺もだよ」

「えっ?」

「俺も桐谷に会えなくて、寂しい」


ふいに向けられた瀬戸くんの掠れた声とどこか切なげな表情に、まるで全身がしびれたように体が熱くなる。


それでもジッと見つめてくるその眼差しが恥ずかしくて

とっさに目をそらしてしまったけれど


さっきよりもグッと強く握り返してくる瀬戸くんの男らしくて骨ばった指先に

わたしは緊張してしまいながらも、精一杯力をふりしぼって口を開いた。


「…ですか?」

「ん?」

「ほんと、ですか…?今、言ったことほんとに…」

「本当だよ」


一瞬のためらいも、迷いもなく返してくれたその言葉に、思わず嬉しくなったと同時に、正直戸惑いも感じてしまった。


瀬戸くん…。

寂しいって

それは、指導者としての感情ですか?

それとも、個人の感情として…?