水泳のお時間

「まったく。しょうがないな桐谷は」


…そしてその日の帰り道


私の体を背中で負いながら、瀬戸くんがため息まじりに呟いた。


その後ろで、わたしは遠慮がちに瀬戸くんの背中へしがみつきながら、気まずそうに顔を俯かせる。


「す、すみません…」


実はあの後、いきなり柔軟をしたせいか、わたしは全く起き上がれなくなってしまって。


なんとか瀬戸くんに助けてもらって体を起こすことは出来たけれど

すっかり腰が抜けてしまって立てない状態に。


これでは練習どころじゃないという事で

こうして瀬戸くんに負ぶされながら家まで送ってもらってる、と言うわけなんだ。


「…っ…」


後ろで瀬戸くんの歩く振動を感じながら

わたしは溢れそうな涙を必死にクッとこらえる。


うう…。最悪だ。まさかまた瀬戸くんに運んでもらうハメになるなんて…。


これじゃ、わたし…本当に瀬戸くんのお荷物だ…。


すっかり落ち込んでしまい、そのまま黙り込んでいたら

とたんに瀬戸くんの背中が揺れ、柔らかい声が聞こえてきた。


「あはは。うそだよ。本気にすんなっての」

「あ…」

「ごめんな。これも俺のせい。いきなり柔軟なんかさせたから」

「そんな…」


そんな事ない…。

瀬戸くんが謝る必要なんて、ないのに。

だって私は瀬戸くんに感謝してる。すごく、すっごく感謝しているのに。