水泳のお時間

「ほら、出来た」


するとすぐに上から瀬戸くんの声が聞こえてきた。


しばらくしてわたしは瞑っていた目を恐る恐る開けてみる。


ん…

あれ?


「どう?痛い?」

「……」


瀬戸くんの言葉に、わたしはフル…と小さく首を横にふる。


そして小さく口をあけて答えた。


「痛くない、です…」


自分でも信じられなかった。

脚は180度近く開かされて、胸やお腹は床についてしまっているのに

想像していたほど、痛いと思わなかったから…。


「最初、痛く感じたのはこういった柔軟を普段からしていなかったからで。今痛いと思わなかったのは、元々、桐谷はそれだけ柔軟な体質を持っているって事だよ」

「わたしが、ですか…?」

「そう。だから習慣づければすぐに慣れるし、体が柔らかいと自然に水泳のフォームもキレイになる」


つまりそれだけ柔軟は必要不可欠だと言う事。


…瀬戸くんの言っていることは最もだと思った。


たしかに体が柔らかいと、それだけ事故のリスクも低くなるだろうし

フォームのキレイさは見た目だけでなくスピードにも影響してくる。


そしてそれは水泳だけに言えることではなく、

きっとどのスポーツにでも言えることだと思う。それは、わたしにでも分かる。

でも…


「……」


正直、わたしは素直に喜ぶことが出来なくて。


この時、わたしが何を考え、何を不安に思っていたか

瀬戸くんは初めから感じ取っていてくれたみたいに、こう言ってくれた。