水泳のお時間

だけど、わたしが携帯を開いたときには着信は切れてしまって。


とっさに履歴を見てみると、電話をかけて来たのはわたしの、お母さんからだった。


きっと、わたしがいつもより帰宅が遅いから心配させてしまったんだと思う。


着信のすぐ前には、わたしの事を心配した様子の母からのメールが届いていた。


どうしよう。帰らなくちゃ…。


「…もうそんな時間?」


だけど私からは言い出せなくて、困っていたら瀬戸くんに後ろから声をかけられた。


急いで携帯を閉じたわたしは、慌てて後ろをふりかえる。


「あ、あの…」

「いいよ。今日の練習はこれで終わりにしよう」

「えっ…」


瀬戸くんのその言葉に、わたしはショックを受けてしまう。


だけどそんなわたしの気持ちとは裏腹に

目の前では瀬戸くんが荷物を担ぎ上げて、わたしを送り出す準備をしている。


終わってしまう。

私がきちんとしていなかったばかりに、瀬戸くんとの貴重な時間がまた…終わってしまう。


「送るよ」

「は、はい…」


ほんとうは、もっと教えてもらいたい。

もう少しだけ…傍にいたい。


親に電話していつもより遅くなるって伝えれば、あと少しでも一緒に居られたかもしれないのに。


だけど、瀬戸くんにとって単なるクラスメイトの繋がりでしか無い私にはそんな事言える勇気も、権利も無くて。


ただコクンとうなずき返すことしか出来なかった。