水泳のお時間

「…ひっくっ…」


何もかもが初めての体験にどうすれば良いのか分からず、戸惑いから思わず涙をこぼしてしまったわたし。


しまいにはそのまま泣き出してしまい…だからまた瀬戸くんに叱られてしまうと思ったのに


そんなわたしを瀬戸くんは少しも注意しようとしなければ

ふいに手を近づけられたかと思うと…その指先で触れるように優しく頬を撫でられた。


「…桐谷には少し、難しかったかな」


瀬戸くんはそう言って、わたしの涙を指ですくい上げてくれたかと思うと、少し困ったように笑った。

その表情に、わたしの目からまた涙があふれてくる。


「桐谷はイヤ?…俺が怖い?」

「…っ…」

「どうして、俺はまた桐谷を泣かせる事しかしてあげられないのかな」


ふと呟いた瀬戸くんの言葉に、わたしは何度も大きく首を横にふる。


違う。違うんです。

瀬戸くんのせいじゃないの。

わたしがいつも泣いてしまうのは、決して瀬戸くんが悪いわけじゃないんです。


わたしはただ、あなたに言われた通りに出来ない自分が悔しくて悲しくて

いつか瀬戸くんに見離されてしまうんじゃないかって、怖くて…。

でも…


「っ…」


その瞬間、わたしは瀬戸くんの制服の裾をギュッとにぎる。

そして小さく、か細い声ながらも精一杯声の声で伝えた。


「…ください…」

「え?」

「息の練習…わたしにもう一度、教えてください…」


だけど瀬戸くんの悲しそうな顔を見るのはもっとイヤだから。


だから例えそれがどれだけ難しくて


そしてどんなに恥ずかしい事だとしても、わたしは精一杯やってのけたい。