“そのゴーグルは、初めて桐谷が水に潜れた…俺からのプレゼントってことで”


その日の夜は興奮してしまって、お風呂から上がりベッドに入ったあとも

なかなか落ち着かなかった。


それでも別れ際に見た瀬戸くんのあの笑顔や後ろ姿…

そしてわたしに向かって手を振り返してくれたことを思い出し、やっぱりまたドキドキしてしまう。


こんな自分が照れくさくて仕方なくて、つい丸ごと布団をかぶってしまったけれど

瀬戸くんがくれたゴーグルを思い返しては、やっぱり口元が緩んでしまう。


「よいしょ」


わたしはかぶっていた布団を戻し、ちゃんと体にかけると、ベッドに横になった。

そして静かに目を閉じる。


「……」


…今日は夢のような一日だったな。

初めて水に潜ることができて、瀬戸くんと一緒に帰ることができて、本当に夢を見ているような素敵な一日だった。


…明日は瀬戸くんに、どんなことを教えてもらえるのかな。


そうだ。明日はわたしから平泳ぎ教えてくださいって言ってみようかな。

そのためにも今日はいっぱい寝て明日の水泳に備えなくちゃ。


だから早く、明日の放課後になりますように。