「しょうがないだろ、部長命令だ」
お父さんの冷たい言葉がまた刺さる。
太い槍で一突き、また一突きと刺していく。
終わりだ。
あたしがうなだれていると、今まで口を開かなかったお母さんが、
「大丈夫よ。引っ越し先、良い所だから」
と、コーヒーを飲みながらのん気に言った。
あたしを落ち着かせるように。
違う、そうじゃない。
良い所とか、関係ないんだ。
「どこに引っ越すの?」
「京都」
「へ?はぁ?!」
予想外の答えに、思わず立ち上がる。
返信途中の携帯は、カタンッと、音をたて床に落っこちた。
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