「じゃ、またね」
車が止まっているところに着き、乗り込んだ。
「じゃあな、元気で」
十弥の優しい声に、泣きそうになるけど、ぐっと堪える。
永遠に会えないわけじゃないんだ。
笑顔でまたね。ってしなきゃ。
と、自分に言い聞かせて、たまった涙を拭く。
笑顔、笑顔。
「またね、十弥。あっち着いたら連絡する」
「分かった。連絡待ってる」
ニコッと笑う十弥。
「車出すぞー」
お父さんの声で、いい雰囲気が乱される。
ま、いっか。
苦笑いで頷き、外にいる十弥に、「車出すって」と、言う。
十弥は、あたしの方を見ると、今までで、最高の笑顔を見せる。
あたしも、過去最高の笑顔を十弥に向け、
「メリークリスマス!」
と、笑う。
「メリークリスマス」
十弥がそう言い終わると、一歩下がり、大きく手を振った。
あたしも十弥以上に、窓から顔を出し大きく手を振る。
発進した車は、どんどん十弥を小さくしていき、ついには見えなくした。
「奇跡、起きますように……」
この街を離れていく車の中で、夜空を見上げながら、独り言を吐いた。