「行くわよー、夏音早く乗りなさーい」

「はーい……」


重い足を引きずりながら、車のドアに手をかけた。


「……ト!セト!」


と、どこからか、誰かがあたしを呼ぶ声。

声が小さくて、誰が呼んでいるのか分からない。


「……セト!セト!」


その声は、段々と近づいてくる。


「セトー!」


声の主は、

生まれた時から一緒で、

カッコよくて、

優しくて、

小さい頃から好きで、大好きで、

最後にちゃんと、別れを言いたかった、

本当は、ずーっと一緒に居たかった──


十弥だった。